𝟏𝟎 ページ10
「…最近、あったかくなってきたとはいえ、寒いなあ」
そりゃそうだ。こんなびしょ濡れになったら寒い。
そして、すれ違う人達からの視線が痛い。でも、足がなまりのように重くて、思うように進めない。
ふらっとしそうになって、おもわず、やば、なんて声が出て、そうすると誰かに支えられる。
「おっと？！大丈夫か？」
「わ、すみません…あ、濡れてないですか、？！」
「ん？大丈夫やで、…って君、なんでそんな濡れてるん？！風邪引く！」
あわあわとし始める身長高めな茶髪マッシュ？ぽい男の子。
「あ、えと、はい、濡れちゃったので着替えだけ取り行こうかな、と…」
「何組なん？」
「1組です」
「ええ！！遠いやん！俺のでよければジャージ、持ってきたるわ！」
あ！でも嫌だったら無理せんでええ！！だけど風邪引いたら困るし早く着替えたいやろ？！と更にあわあわし出す。
「…お言葉に甘えてもいいですか？」
まだ寒い朝に冷たい水を急に浴びたからか体が冷えきっている。着替えれるなら早く着替えたい。名前も知らない人だけどわたしにわざわざ親切にしてくれるなら良い人だろう。それなら甘えたい。
「おん！それじゃあ持ってくるわ！ちょっと待っとってな！」
バタバタと廊下を走っていく見知らぬ男の子。
全然関わりのない人なのにあそこまで真剣に、手助けしてくれるなんて。目黒くんと同じタイプぽいな〜なんてぽわ〜っと考える。
冷えきった心が少しあたたかくなってるようで、優しさに触れられて嬉しいな、なんて。
男の子は息を切らしながらジャージを持ってきてくれたのだけど、1分もかかってないんじゃないか？というぐらいすぐ持ってきた。何組なの？と聞いてみると5組！！と答えた。……まずまず1年の教室まで、走っても2〜3分はかかると思うんだけどな…とどこかデジャヴを感じながら保健室へ向かう。……男の子は無言でついてくるから少しどきどきするけど。
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作者名：もりの | 作成日時：2024年4月4日 21時
