𝟏𝟕 ページ17
……気まずい。あまりにも気まずすぎる。
教室に戻ろうと目黒くんに声をかけられて、2人で並んで教室までの廊下を歩いているけれど、ずっと無言。本当に無言。
「……A」
沈黙を破ったのは目黒くんだった。
「なんでしょうか…」
この前、あまり機嫌が良くなさそうな時に少し話した以来話していないからか、いつもより緊張する。
特にここ最近は毎日のように話していたから、数日ぶりに話す。それがまた緊張の種になって、変な汗が出てきそう。
「こーじ」
「？あ、向井くん？」
「ん。…仲良いの？」
目黒くんの大きな目が真っ直ぐわたしを見つめていて、なんだか恥ずかしくて、そっぽを向く。
「いや…まだ仲良いってほどじゃ」
「クラスも違うのに、どこで関わったの？」
委員会？…いや、2人とも委員会違うよね、と独り言。
「この前ドジってしまったって話はしましたよね」
「あー、うん。そういえばなんか言ってたね」
「そう、そのときに教室が少し遠くて。教室が近めな向井くんが親切でジャージを貸してくれたっていう感じで」
「ふーん……ドジってなにやらかしたの？」
Aってどちらかというと慎重に動くタイプなのにね、と目黒くん。
ぎくり、としながらもなんとか誤魔化す。
「朝から絵、進めてたんだけど、筆洗落として制服に水かかっちゃって」
朝だから寝ぼけてたのかもねえ、なんて笑うと、ひっせん…？と独り言をこぼしながらも目黒くんも笑う。
「かわいらしいドジしちゃったんだね」
「あはは…まあ……」
嘘をついてしまったのは少し罪悪感あるけれど、疑われてないみたいだし、いつも通りの目黒くんだし安心だ。
なるべく距離をとりながらも、迷惑をかけずに、目黒くんとも少しでもお話できたらなあ。
そんな風に思いながら、教室につくまで話に花を咲かせるのだった。
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作者名：もりの | 作成日時：2024年4月4日 21時
