箱庭の夢【黒】 (ページ14)

今日:147 hit、昨日:179 hit、合計:24,186 hit

𝟏𝟒 ページ14

今日のお弁当はいつもと変わらないお母さんの愛のこもったお弁当だったはずなのに、あまり味がしなかった。

　
放課後、静かな美術室では、わたしのため息すら響いて聞こえてくる。

お昼休み後も度々、目黒くんは話しかけてこようとしていたみたいだけど、女の子に捕まっていたり、わたしがお手洗いに逃げたりして、なんとか話さずに済んでいた。

目黒くんはいい人だし、素敵な人だとも思うけど、わたしからしたら手の届かないような存在の人だし、なによりクラスの女の子にこれ以上敵対視されても困る。

また、朝みたいなことが起これば、学校生活に支障をきたすし、先生や親にバレてしまえば大事になってしまう。平穏に過ごしたいわたしからすればそれは避けたい。

それに、目黒くんは自分のせいで危害が加わるようになったと考えてしまう可能性もある。元々小さな嫌がらせをされていたけれど、それが目黒くんのせいで悪化してしまったとすれば、優しい人だから気に病んでしまうだろう。友達だからこそ、それも避けたかった。

それに、多分目黒くんは、わたしが嫌がらせを受けているだなんて微塵も思っていない。人から嫌がらせを受けたりする弱い自分をなんだか見せたくもなかった。

「……ごめんね、目黒くん」

貴方との時間はとても素敵で楽しくて仕方ないけれど、怖かったりもするの。目黒くんの優しさに触れれば触れるほど、素敵なところを見つければ見つけるほど、自分がどれだけ小さな人間かと、考えてしまうの。

とりあえず落ちつくまで、目黒くんとの接触は避けないとな、と考えていると、何故だか筆が進まなくなってしまった。

……思った以上に今日は疲れてしまったのかも、と早めに切り上げて帰ることにした。