橙の彼 ページ1
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数メートル先にいる、カメラを首から下げた彼
その後ろ姿は、すれ違う誰よりも輝いて見えた。
「康二！」
「なんや、Aやんか、どないしたん？」
「どうしたって、忘れたん？今日一緒に行こう言うてたやん！」
「あー、そうやったなぁ、忘れてたわぁ。」
「昔っからやなぁ、忘れっぽいの。」
「なんや、俺がおじいちゃんみたいな言い方やん笑」
「おじいちゃんなんやないの？笑」
「俺がおじいちゃんなら、Aはおばあちゃんやな〜？」
康二とは昔っからの付き合い。俗に言う、「幼馴染」。
幼稚園から高校まで、ずーっと一緒の腐れ縁。
太陽みたいに明るくて、誰とでも仲良くなれて、誰にでも優しい。
私はそんな幼馴染が好きだった。
「…なぁ、康二。」
「んー？」
「前言っとった好きな子と、どんな感じ？」
「あー、進展はないなぁ。」
「アピール、してるんやろ？」
「俺はそのつもりやけど、その子、鈍感で気付いてへんの、笑」
「そうなんや、気付いてもらえるとええな！」
康二の家で一緒に課題をやってる時、不意に康二の口から出たのは、
「俺、好きな子できた。」やった。
聞いた時はショックで、手から落ちそうになったシャーペンを慌てて持ち直した。
平然を装って
「へぇ、康二にも出来たんやなぁ、よかったやん！」なんて、強がった。
私も好きなのに、なんて口に出す勇気もなく、康二との関係は幼馴染止まり。
「A？どないしたん？」
「…なんも。」
思わず止めた足を前に進めて、康二に並ぶ。
たった2文字の言葉を口にしたら、この距離が、今の関係が崩れてしまいそうで
怖かった。
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作者名：もも | 作成日時：2024年3月14日 13時
